2011年10月4日

ご専門は?

 この仕事をしていて、よく聞かれるのが、「先生のご専門は何ですか?」という質問です。
 先月から、iタウンページに萩・山口法律事務所の情報が載るようになったのですが、ここでも「主な取扱い業務」のようなものを書かなくてはいけませんでした。業務内容に何を入れて何を入れないかは迷う所ですが、iタウンページに載せる情報の内容はどうしても定型的なものにならざるを得ず、とりあえず扱う分野のお仕事を網羅的に全て載せておくという感じになっています。
 で、実際のところ、何が専門とか得意分野ですかと聞かれると・・・、何とお答えすべきか迷った末にですが、「何でもやります。」とお答えすることにしています。というのも、私が萩に来て弁護士を始めてこの9月でちょうど丸6年になりましたが、6年前には、萩に弁護士事務所が一つしかなく、相談に来られた方の相談はどのような内容でもそれなりに回答できなければなりませんでしたし、実際に依頼を受ける段になった場合は、どのような事件でもその方が法的な問題で困って弁護士を必要とされている以上、ご依頼を断るということは考えられず、事件を受けて対処してきたつもりです。離婚はやりません、労働事件は扱っていません、医療訴訟はできません等と言っている場合ではなく、「何でもやります。」と何でもやれなければいけないという状況だったのです(もちろん、自分一人では困難だと判断した事件の場合は、他の先生のご協力を仰ぐこともありました。)。
 このような状況は、弁護士の数が少ない地域で仕事をされている弁護士さんはどこも同じような事情のはずで、特に「専門」を標榜される弁護士さんは、東京・大阪等の大都市で働く弁護士さんだけではないでしょうか。
 このように何でもやらなければいけないし、何でもできなければいけない、というのが実情なのですが、それでも、特に相談の多い分野の事件とほとんど相談のない分野の事件というのも確かにあるわけで、そうすると自ずと得意・不得意のようなものが出来てくるということもあります。私の例で言いますと、借金の問題や遺産相続の問題、離婚、土地の境界問題等の相談が多かったように感じます。反対に少ない相談としては、企業絡みの相談、未払い賃金の請求等の労働問題等の相談が少なかったように思います。そうはいっても、このように単純にある「分野」に簡単に分類できないような相談がたくさんあるわけで、それこそ一つ一つの相談は全く同じものがなく、それぞれが個性的な唯一無二な相談なわけですから、相談される方も一生に一度の大問題を私の法律事務所に相談に来られ、相談を受ける私の方もこの唯一無二の問題を、これまでの過去の例に照らしながら、過去の例とどこが同じでどこが違うのか等と考えながら自分の経験と知識を総動員して相談に乗るということになります。過去の経験が活かされるのは、何も似たような種類の事件ばかりとは限りません。以前に私が依頼を受けた債務整理の事件での経験が、新しく相談を受けている相続関係の問題で役に立つこともあります。「人」と「人」との仕事ですから、弁護士の仕事に「定型」というものはなく、全ての事件が私にとっても初めて経験する新しい事件なのです。
 そう考えてみると、得意分野も不得意分野もないのではないかと思われて、「先生のご専門は何ですか?」という質問に対しては、これからも変わらず、「何でもやります。」とお答えすることになるのでしょう・・・。