2012年2月1日

No Problem

ご挨拶が遅くなりましたが、新年もよろしくお願いします。

 さて、そろそろ映画や音楽などの趣味の話でも書こうかと思っていたのですが、せっかくの新年最初の書き込みなので、今年の「意気込み」みたいなものも書かなければとも思いますので、両方をミックスした趣味と意気込みの話でもひとつ。

 
 私がプロフィールでお気に入りの音楽として挙げている「Flight to Denmark」ですが、デューク・ジョーダンのこのジャズ・アルバムは、他に挙げている「ワルツ・フォー・デビー」や「サムシング・エルス」といった超メジャーなアルバムと比べると、ややマイナー感があるかと思われます。ですが、私は、このアルバムが大好きで、家で毎日かけていても全然飽きないほどなのです。「ワルツ・フォー・デビー」や「サムシング・エルス」も、何度聴いても「いいな~」と感じられる名作ですが、やはり時と場合を選んで掛けたくなる音楽で、家でご飯を食べながら毎日聴くというアルバムではないように感じるのものの、この「Flight to Denmark」は、不思議と飽きません。まあ、悪く言ってしまえば、カフェ・ミュージックのように聴きやすい、部屋で何かしながら聞くようなBGM的な音楽ということになるのかもしれませんが。
 私がこのデューク・ジョーダンのアルバムを知ったのは、萩の私のお気に入りのカフェレストラン「ラ・セイバ」に置いてあったのを見つけたのがきっかけでした。ここのマスターは音楽好きで、私はよくお店に置いてあるCDを借りて帰るのですが、借りるCDは毎回はずれなく良いアルバムなのです。「Flight to Denmark」は、ジャケットが気に入って、直ぐに借りて帰ろうと決めました。ジャケットは、雪原で一人コートを着て佇むデューク・ジョーダン(だと思う男性)の写真で、凛とした中にどこか哀愁がただよう様子に心惹かれました。家に持ち帰って聞いたところ、やはり音楽も、哀愁漂うメロディーの中にピンと張りつめたものがあって、胸に響きました。アルバムの1曲目。最初に、ジャ~んとシンバルが鳴り響き、独特のイントロが。その後、チャンッ!と高音のピアノが叩かれ、もう一度、チャンッ!そして、印象的なピアノリズムが奏でられ曲が始まります。このメロディーが胸がぞわぞわするほど哀愁漂う感じでとてもいいです。その後の曲も、明るいアップテンポな曲で楽しくなるメロディーも多いのですが、どこか雪原で佇む一人の男性を思わせる美しくも哀しい感じを醸し出しています。
 さて、趣味の話ばかりで全く「意気込み」の話が出てきませんが、これからです。
 このアルバムを借りてから後に初めてラ・セイバに行った際のことです。私は、ラ・セイバのマスターの朗太さんに、このアルバムがとても良かったという話をしました。すると、朗太さんは、「僕がこのお店を作る前、このアルバムみたいなお店を作りたいなと考えながらよくこのCDを聞いていました。」という話をされ、私は、はっとしました。朗太さんの言葉の意味がすごく良く分かるような気がしたのです。
 私は、この「Flight to Denmark」のCDを借りてから、何度も繰り返し聴き、何故、こんなに心惹かれ琴線に触れるメロディーなんだろうかと考えたのですが、それは、適度にキャッチーな、ある意味通俗的なメロディーなんだけれど、それを通俗に堕さない「何か」があるからじゃないだろうかとそんなことを漠然と考えていたのでした。その「何か」というのは、はっきりと言葉で表すことはできないのですが、この「Flight to Denmark」のデューク・ジョーダンにはそれがあるような気がしたのです。CDレヴューを読むと、「チャーリー・パーカーのもとで活躍したデュークも、1962年以降主だった活動もなく、タクシーの運転手をしたりしていた」ところ、「一定のジャズファンが存在し、人種差別も比較的少ないデンマーク」に渡り、1973年にアルバムを録音した。それが「Flight to Denmark」でした。音楽の世界を離れタクシードライバーをしていたデューク・ジョーダンに一体何があったのかは知らないけれど、デューク・ジョーダンはデンマークに飛び、そしてこの美しい(と言ってしまっていいでしょう)アルバムを作った。人生分からないものです。
 ラ・セイバのマスターである朗太さんも、数年前に関東の方から萩に来られ、ラ・セイバを作られました。萩の地元の人々だけでなく遠くから来られる観光客にも愛される素敵なお店です。皆に愛される、気取らない、親しみやすい、「通俗的な」、「キャッチ―な」お店ですが、凛とした「何か」がラ・セイバにも(そして、朗太さんにも)あります。そんなところが、私がラ・セイバに惹かれる理由だと思います(言い忘れましたが、朗太さんの作る料理は掛け値なしに美味しいです!)。
 さて、ここまで来れば、もうお分かりかと思いますが、私の「意気込み」です。
 私も、朗太さんの言葉を聞いて思ったのです。「Flight to Denmark」のような事務所を作れたらいいなと。気取らない、親しみ深い、明るく暖かい雰囲気の中にあって、それと矛盾することなく、雪原に凛とたたずむ一人の男性のイメージ・・・。
 と、言われても、全くイメージが沸かないと思いますので、百聞は一見(聴)に如かず。
 お待たせしました、アルバム「Flight to Denmark」から No Problem です。

http://www.youtube.com/watch?v=HDzaINwBpA0&feature=related